大阪地方裁判所 昭和42年(ワ)2149号 判決
原告
村上俊明
被告
高丸組丸一運送株式会社
第一 主文
一、被告は原告に対し、五〇九、七〇〇円および内金四六九、七〇〇円に対する昭和四二年五月一八日から、残金四〇、〇〇〇円に対する昭和四三年一月一三日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二、原告のその余の請求を棄却する。
三、訴訟費用は被告の負担とする。
四、この判決一項は、かりに執行することができる。
第二 原告の申立て
被告は原告に対し、五〇九、七〇〇円およびこれに対する昭和四二年五月一八日(本訴状送達翌日)から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。
との判決ならびに仮執行の宣言。
第三争いのない事実
一、傷害交通事故発生
とき 昭和四一年四月八日午前一一時五〇分ごろ
ところ 大阪市東住吉区平野元町七丁目二二番地先横断歩道上
事故車 自動三輪車(大六え三六三七号)
運転者 訴外吉田晋策
受傷者 原告(当時一三才)
傷害名 脳しんとう、左右側頭部・左側顔面打僕血腫、右口角部裂創、右上第一、二門歯・犬歯折損、左上第一門歯折損、右膝部打僕傷、上腹部打僕傷。
態様 東から西進中の事故車が北から南に向け横断中の原告に接触し、ために転倒した原告が受傷した。
二、損害のてん補 一四一、五八〇円
被告は原告に対し、入通院治療費八三、七八〇円、付添費等五七、八〇〇円を支払つた。
第四争点
(原告の主張)
一、被告の責任原因(自賠法三条)
訴外吉田は被告所有の事故車を被告の業務に関し運転中前記事故を起こした。
二、原告の損害 合計 六五一、二八〇円
(1)療養費 計一七一、二八〇円
(イ)入通院治療費(吉田外科)八六、二八〇円
(ロ)付添費四八日分(貸ふとん代を含む) 五七、八〇〇円(争いがない)
(ハ)通院費(吉田外科) 二、四〇〇円
タクシー往復 一回六〇〇円×四
(ニ)右通院付添費 二、〇〇〇円
一回五〇〇円×四
(ホ)歯科治療費 二一、八〇〇円
(ヘ)右通院付添費 一、〇〇〇円
一回五〇〇円×二
(2)慰謝料 四〇〇、〇〇〇円
本件受傷により入院四八日、通院二二日、さらに折損歯治療のため約三ケ月間通院を要した。当時長瀬中学の二年生でその進学の日に事故にあつたため一学期はほとんど通学しえず、精神的肉体的苦痛ははなはだしかつた。家庭教師を依頼して学業の遅れを取り戻しようやく進学することはできたが、後遺症として、ときに、はなはだしい頭痛があるうえ、義歯は成長に応じ二、三度入れ替える必要がある。なお原告の父は配達員四人、得意先約二、〇〇〇戸を持ち相当手広く牛乳販売業を営むものであるが、本件事故により一部休業等による損失は多大であつた。
(3)弁護士費用 八〇、〇〇〇円
三、本訴請求
以上損害合計額から前出てん補額を控除した残額五〇九、七〇〇円およびこれに対する前記遅延損害金。
(被告の主張)
一、過失相殺
原告は前方を注視せず、しかも道路横断の中途までは普通に歩行しながら事故車に注意することなく急に走り出して向こう側へ横断しようとした過失により事故車と接触した。
二、慰謝料算定上しんしやくされるべき事情
原告が受傷入院中、訴外吉田らは三日にあげず原告を見舞い、被告において入院治療費、付添料を全額負担することとして、原告が安心して治療に専念できるよう配慮した。
第五証拠〔略〕
第六争点に対する判断
一、被告の責任原因(自賠法三条本人)
〔証拠略〕によると、訴外吉田は被告の運転手であり、その業務に関し被告所有の事故車を運転中本件事故を起こしたものであることが認められる。
二、原告の損害 合計 六五一、二八〇円
(1)療養費 計 一七一、二八〇円
(イ)入通院治療費(吉田外科) 八六、二八〇円(〔証拠略〕)
(ロ)付添費四八日分(貸ふとん代を含む) 五七、八〇〇円(争いがない)
(ハ)通院費(吉田外科) 二、四〇〇円
原告主張のとおり(〔証拠略〕)。
(ニ)右通院付添費(四日分) 二、〇〇〇円
原告の父が付き添わざるをえなかつたため、牛乳配達員を半日五〇〇円で雇つた(〔証拠略))。
(ホ)歯科治療費 二一、八〇〇円(〔証拠略〕)
(ヘ)右通院付添費(二日分) 一、〇〇〇円
前記(ニ)に同じ。
(2)慰謝料 四〇〇、〇〇〇円
前出傷害のうち歯以外の治療のため昭和四一年四月八日より同年五月二五日まで吉田外科に入院し、退院後も同年六月一五日まで通院したのち、歯の治療のため同年六月二三日より同年九月一九日まで高田歯科医院に通院したこと、受傷直後は一時意識不明でありその後約一週間にわたり軽度の意識障害が認められ、退院後も昭和四一年一〇月上旬ごろ激しい頭痛を覚えたことがあること、前歯折損のため義歯を入れているが成長に伴い入れ替える必要があること、事故当時中学二年生であつたが一学期はほとんど登校できなかつたことが認められる(〔証拠略〕)。
とすると、後記の事故態様や証人吉田晋策の証言および被告代表者本人尋問の結果により認められる被告側の誠意の程度をしんしやくしても、原告に対する慰謝料は前記の額を下らない。
(3)弁護士費用 計八〇、〇〇〇円(〔証拠略〕)
(イ)着手金 四〇、〇〇〇円
(ロ)謝金 四〇、〇〇〇円
三、過失相殺の適否
〔証拠略〕によると、訴外吉田は時速約四〇キロメートルで事故車を運転西進中、全長約一六メートルの本件横断歩道手前にさしかかり北から南に向け横断歩道上を歩行中の原告を約三六メートル右斜め前方に認めたが、原告が道路中心線に達する前に通過できるものと判断し、警音器を吹鳴することなくそのままの速度で進行を続けたところ、横断歩道の手前約一〇メートルに接近したとき原告が急に走り出したため、急ブレーキを踏んで衝突を避けようとしたがおよばず接触したことが認められるので、右事実によると、原告は左(東方)に対する注意を欠いたまま横断歩道を急いで渡ろうとしたものと推認せざるをえない。
しかしながら、横断歩道においては歩行者に優先通行権が認められているのであるから(たとえば道交法七一条三号)、自動車運転者としては、横断歩道上に歩行者を認めたときは必ず徐行し、場合によつてはその直前で一時停止し、もつて歩行者の安全をはかるべき注意義務があるというべきところ、前認定の事実から判断すると、本件事故は、自動車運転者として守るべき右の注意義務を怠つた訴外吉田の重大な過失が主因となつて発生したものであることが明らかであるから、たとえ原告に前記のような不注意があつたとしても、これをもつて過失相殺に値する過失と認めるのは相当でない。
四、損害のてん補 一四一、五八〇円(争いがない)
五、結論
被告は原告に対し、損害残額五〇九、七〇〇円および内金四六九、七〇〇円に対する昭和四二年五月一八日から、残金四〇、〇〇〇円(謝金)に対する昭和四三年一月一三日(本判決言渡日)から支払いずみまで年五分の割合による遅延損害金を支払わなければならない。
よつて、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 谷水央)